設立趣旨

1. 趣旨

日本の大河川及び都市部の中小河川では、流域住民の安全、安心そして快適な生活を守り、さらに自然環境の保全をも考慮した河道計画が策定されている。

しかし、日本全体ではいまだ未整備の河川も多い。 近時の地球温暖化現象により、今までの想定を超えた降雨量及びその振る舞いが河川の氾濫を生起させ、処々に甚大な被害をもたらしていることは周知のとおりである。 比較的河川環境が整備された日本においてさえ、このような状況であるので、日本に比べて河道計画が確立されておらず、治水対策が未整備のアジアの国々河川の氾濫による家屋への浸水、土石流の発生による家屋の損壊、生態系の破損らの被害が日本以上に看過できない状況である。

 設立予定の法人の活動の主たる対象地であるラオスは、人口が約700万人で、その大半は、メコン川との密接な関わりを持って生活をしている。     特に、その豊富な水量を利用した水力発電事業は、国の基幹産業であり、現在、さらに多くのダムが建造或いは計画中で、インドシナのバッテリーともいわれている。

 一方、農業の中心は、コーヒー、バナナの栽培であるが、いわゆるプランテーション化の進行に伴い、土地の痩せ地化、肥料による土壌汚染、水質汚濁等が今後のの課題としてクローズアップされてきている。     また、ダム建設が水資源地の住民生活に与える影響として、集落の分解による地域のコミュニティーの崩壊があげられ、その結果として離農による都市部への移住が増加傾向になっている。

 こうした状況の中、水と緑に恵まれたこの国の豊かな自然環境を保全し、かつ利水や治水の充実を図り、農業の健全な発展と地域住民の生活のレベル向上を図るためには、秩序のある計画の策定と計画推進のための人材の育成が急務である。

 ラオスは、現在は政情が安定しているといわれているが、人材の育成を担う教育は、整備途中であり、また、高等教育の場である大学の数も少ない。

 ビエンチャンにあるラオス大学はその施設面での充実度、人材も抜きんでており、日本留学帰りの教員もいる。

 福井は10年ほど前からラオスでの河川調査を行っており、ラオス大学の土木工学系、環境科学系に知己がおり、その方々と当法人設立賛同者の方々とで、水と土を通しての共同研究を推し進めていく予定である。

 さらに、人材育成のプログラムの一環として、ラオスの大学院生、大学生に対する日本での短期研修を実施する。日本の河川・環境の実態、施策を見聞すること、日本の学生と交流することは、彼らの知識向上に役立つだけでなく、国際交流。親善の面からも意義がある。併せて、日本の学生がラオスで現地調査、研究を行うことで、さらに相互理解を深め、アジアおよび日本の河川環境の向上を目指す中で国際協力と親善を実現したいと考えている。

 以上の目的実現のためには個人の活動では限界があり、目的を同じくする専門家の知識・研究の集積による組織的な活動が効率的であることは言うまでもなく、ここに特定非営利活動法人「アジアの水と土と人の交わり」設立する次第である。

2.申請に至るまでの経緯

 2008年から2010年にかけて、文部科学省の支援の下で、東洋大学が行ったアジアに関するプロジェクト研究でラオスの担当者として、同地域の河川環境の調査研究を始めて以降、その研究を通じてラオス大学の教員、学生及びラオス政府水資源省の職員等との交流が深まる中で、個人としての交流だけで終わらせないために、賛同者と共にNPO法人を立ち上げ、設立趣旨に則って、その活動をすることにより、国際協力と環境保全をよりステップアップさせるべく本申請に至った次第である。

 平成30年7月5日

特定非営利活動法人 アジアの水と土と人の交わり

            設立代表者 福井吉孝